【番外編】乙葉の巫女装束

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  ──とある道中── 「ふぁぁ~…あづい~……。」 「そうか?」 そう言って、乙葉は隣で暑さからぐったりとうなだれている暫永に顔を向けた。 今日の天気は雲一つ無い快晴。 どこまでも続く青空では、雀が数羽楽しそうに飛んでいる。 「こんなに晴れた天気は希だよぉ~……。」 「一般的な天気だぞこれは。 寧ろ、お主の村の豪雪が希だ。 暑いのなら、腰に巻いてる毛皮を脱げばいいだろう?」 「それは嫌だぁ~……。」 「ワガママなやつだな。」 ふと暫永は乙葉に視線をやり、ジロジロと見始めた。 「何だ? 私に何かついているのか!?」 「ううん。 ただ乙葉様の衣、不思議な色だなと思って。あと、作りもおもしろい。」 「あぁ。これか。」 そう言われ、乙葉も視線を下ろす。 「巫女装束って、白衣は白で、袴は赤色だよね? なのに乙葉様の白衣は苔色、袴は肉色。 そんで、丈が全体的に短い。」 「もっと他に、色の表現はないのか!? 百歩譲って苔は見逃してやるが、肉色は止めろ!」 「何でこんな色なのぉ?」 無邪気な子供のような表情で、ふにゃと首を傾げる。 「まぁ、話せば少しばかり長くなるぞ。」 「いいよぉ~。 道はまだまだ続くんだし。」 「まぁ、確かに。それもそうだな。 あれは、私が十歳になる日の事だった………。」 ─ ─── ────── .
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