初音

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「あ……」 小さな足音が近づいてきたかと思えば、小さな声が微かに漏れる。 ――ほら、来た やはりと思いながら、小十郎はその緑眼にやさしい光を帯びさせながら、首を巡らせた。 声の主は、戸惑ったように手を胸元で握りしめて、こちらを見ていた。 「小十郎さん。  おはようございます」 そういって微笑む灰猫は黒い袿を羽織っている。 どうやら以前、小十郎に言われた事をよくわかっているようだ。 .
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