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夢の内容は、別に聞こうとは思わない。
彼女が言わないのは、きっと言いたくないからなのだ。
「でも、小十郎さんの
その笛の音を聞いていると
不思議と安心するんです」
こちらを向き、彼女はにっこりと笑顔を見せる。
「嬉しいことを
言ってくれるのですね」
さらさらとなびく髪がとてもきれいで、触れたらどんな感触なのだろうかと思う。
――ああ、また
邪心だ。
この娘を見ていると、違った自分を見つけてしまう。
ちょっと複雑だな、と思いながら、小十郎は再び笛へと唇を近づける。
奏でられ始めた音を、灰猫は目を摘むって聴いていた。
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