初音

6/6
514人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
夢の内容は、別に聞こうとは思わない。 彼女が言わないのは、きっと言いたくないからなのだ。 「でも、小十郎さんの  その笛の音を聞いていると  不思議と安心するんです」 こちらを向き、彼女はにっこりと笑顔を見せる。 「嬉しいことを  言ってくれるのですね」 さらさらとなびく髪がとてもきれいで、触れたらどんな感触なのだろうかと思う。 ――ああ、また 邪心だ。 この娘を見ていると、違った自分を見つけてしまう。 ちょっと複雑だな、と思いながら、小十郎は再び笛へと唇を近づける。 奏でられ始めた音を、灰猫は目を摘むって聴いていた。 .
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!