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「俺は気に入った奴しか名前呼ばない」
「俺よりこいつの方が気に入ってるって言うのかよ」
「そうだな」
さらっと言う鴇矢に、嫉妬の眼差しを礼一に向ける大地。
礼一はそんな大地をみる。
その横顔は、とても冷めた目をしていた。
あの時と同じ。
大地に対して見る目や態度、表情は冷めきっている。
そして、口元をフッと緩ませる。
まるで、残念な物を見ているように。
これは誰?
礼一はこんな顔をする子だった?
違う、俺の知っている礼一は。
「ムカつくんだよ!!お前なんか!!!」
「レーチっ!!!」
「礼一っ!!」
ドンッと鈍い音共にパラッと紙が舞う音。
そして、物体たちはスローモーションになった。
自分さえも遅く感じ、けれど、必死に大切な人を掴む。
けれど、その時の礼一の言葉が小さいけれど、はっきり聞こえた。
「アオ、俺はもう疲れた―――バイバイ」
「―――え……?」
安心した目で、穏やかな眼をしていた。
それさえもスローモーションだった。
"バイバイ"
とその言葉を紡ぐ口さえも。
礼一の倒れる方向とは逆の方向へ引っ張られる。
とても強い力で。
やっとつかめた礼一の腕。
掴んだ力は弱く、体たちは引き離される。
礼一は全部計算に入れて居たように微笑んで、言葉を紡いで
階段から落ちた―――。
一般棟である階段。
生徒たちが、礼一と俺のクラスメートが礼一の名前を呼んで騒ぎ出す。
そして、階段から見下ろす俺と、俺の腕を掴む大地。
いち早く駆けだす鴇矢。
落ちた礼一の頭からは赤い……真っ赤な血が流れ廊下を赤く染めた。
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