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Side.蒼生
「だから、誰?」
言葉が分からない。
日本語?なのかすら。
誰なんだろう。
一体誰。
病室には、ベッドの所には、ちゃんと礼一の名前が書いてある。
書いてあるし、姿かたち知っている礼一なのに。
「レーチ……」
礼一は階段から落ちた。
落ちて、頭から血を流して。
「蒼生!何やってる!!お前ら早く救急車と保険医を呼んで来い!動かすなっ!」
鴇矢が指示を出して皆が動いているのに、俺の体が上手く動かなくて。
「レーチ……レーチ…っっ[目を覚ましてっ!レーチっ!]」
「蒼生っ動かすな!」
なんで、どうしてこんな事に。
救急車が来て、礼一を付属病院に搬送した。
手術中と言うランプが光る扉の前で、生徒会の俺らは茫然と立ち尽くす。
俺の手に服に付着する礼一の血。
あの時言った礼一の一言が思い出される。
「も…つかれた……」
「何を言っているんです。蒼生」
フルフルと首を振る。
ポタポタと涙が流れ、俺はたどたどしく日本語を紡いだ。
「レーチ…言った…もう、疲れた、んだ…ごめん。って……レーチ…最後にこう言った」
大地に押されて落ちる時も、何の抵抗もなくて、俺の掴んだ手をほどいて落ちて行った。
礼一は消えようとしたんだ。
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