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手術は成功した。
けど1週間目を覚まさなかった。
そして、今日目を覚ましたのに、そこに居るのは礼一であって礼一ではなかった。
「礼一君…」
「礼一っちゃん、俺らの事分からないの?!」
薫も世未も困惑していた。
鴇矢も目を見開いて立っているだけ。
「レーチッ」
分からない。
日本語分からない。
礼一が俺を忘れるなんて。俺は。
「れいいち?なんで、お前らが礼一の事を知ってるんだ」
「れー…ち」
不快そうに眉間にしわを寄せ、俺たちを見る礼一。
それにヒュっと喉が鳴る。
「れーち?れーち、は、れーちでしょ?」
「は?」
「[礼一は礼一だよね!?自分の事も忘れたの!?礼一!!]」
「蒼生やめろ」
「[だって鴇矢!!っ……]」
礼一が、俺を……俺を睨んで拒絶している。
なんで、
『アオ』
なんで、笑ってくれない……。
「[いやだっ!!]」
「蒼生!!」
俺は病室を飛び出す。
礼一が礼一じゃない。
あんな礼一なんて知らないっ。
俺が知っているのは―――
『見た目で判断するんじゃねぇ!!』
「……しらない……」
全部を知らない。
怒った礼一を知ったのはつい最近。
知らないのが怖い。
怖いと思った事が今起きた……。
「レーチ……れいち……あああああああ!!!」
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