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カツンカツンーー
アレクサンドルは城の地下に続く階段を魔術師と将軍二人をずつ連れて下っていた。
「陛下、もう一度よく考えて下さい! 本当にあの開拓囚人を出すのですか?」
「くどいぞ。奴を出す以外にこの状況をどうやって切り抜けるのだ?」
「・・・・・・しかし」
カツンカツンーー
初老の将軍の意見をまるで意に介さずアレクサンドルは階段を下り続ける。
開拓囚人
開拓囚人とはこの国で犯罪を犯した者をロストワールドの開拓に当てた者の事を指す。
ロストワールドは危険極まりない為に、犯罪者を利用し、開拓を進めようとしたのだ。
開拓に貢献出来れば刑期を少なくする事は出来るがロストワールドに送られる事は死刑を宣告されるに等しくこの国の犯罪率は極端に少ない。
以前は開拓への焦りからどんな犯罪を犯した者でも開拓囚人とされていた。
しかし現在はアレクサンドルによって改正され凶悪犯罪に限定されている。
本当ならばこの悪法はなくなるべきだとアレクサンドルは考えていた。
カツンカツンーー
「しかし陛下、開拓囚人0496は・・・・・・」
扉の間まであと少しという所でまた初老の将軍が意見を言い出す。
「オイオイ何度もうるさいんだよ、ご老公よ」
いい加減辟易してきたアレクサンドルに変わって若い将軍が反論をする。
「何に恐がってるか知らないが、相手はただの囚人だろ?力ずくでも言う事聞かせればいいじゃねぇか」
(力ずく、ねぇ・・・・・・)
アレクサンドルは内心ため息をつく。
「お前は奴を知らないからそんな事が言えるんだ・・・・・・」
失礼な若い将軍の態度に初老の将軍は怒りにではなく恐怖に身を震わせていた。
「はっ、どんな奴かは知らないが、囚人が将軍の俺より強いわけねぇだろ。なんたって俺は先の戦では―」
「無駄な話しはそれまでにしろ。着いたぞ」
アレクサンドルは若い将軍の声を遮りロストワールドに続く扉の間を進む。
「何ですか、ここは? 扉なんて何処にもないじゃないですか?」
若い将軍の言う通り、扉の間とは名ばかりでそこにはローブを深く被った魔術師が四人アレクサンドルに頭を下げて居るだけで扉らしいものはない。
「早速で悪いが、直ぐに始めてくれ」
「はっ!」
もちろん、そんな事アレクサンドルは知っている。
何故なら
「πυλαι・・・」
扉は魔法によって創られるのだから
何もない空間に、突如として扉が出現し静かに扉が開かれた。
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