序章「制御不能な希望」

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「マジかよ・・・・・・」 一連の流れを見て言葉を失っていた若い将軍が小さく唸りを上げた。 「驚いていただけたのなら頑張った甲斐がありましたね」 一人の魔術師がフードを払いながら言う。 光り輝く魔法の扉でその男の端正な顔が照らされた。 「うむ、相変わらず見事な空間魔法だな、ワグナー」 「はっ、光栄であります」 ワグナーと呼ばれた男は片膝をつき頭を下げる。 ロストワールドの扉は空間魔法を使用して開かれる。 だが、本来の空間魔法なら遠くを映し出したり空間の認識をずらしたりするだけの効果しかない。 それぞれ魔力が高い四人が演算魔法をする事で初めてその可能性が開かれるのである。 無論、扉を出現させるには他にも条件がある。 「さて、時間がない。ミーティア、結界を張ってくれ!」 「ふ、ふぁい!」 付き添いの魔術師の一人、ミーティアと呼ばれた少女が前に出てくる。 その顔立ちは幼く、ロストワールドの付き添いには不適応だと思えた。 「こんなガキで大丈夫なのかよ?」 案の定若い将軍が不平を漏らす。 その言葉にミーティアは少し落ち込んだようでシュンと影を落とす。 「気にするな。私はお前の魔力を信用して連れて来たのだ」 アレクサンドルは若い将軍を軽く睨みミーティアを励ます。 もちろんこの幼い魔術師がこの場に居るのにはちゃんとした理由がある。 それは 「ναοζ・・・」 魔力がずば抜けて高いからだ。 「うおっ、何だ?」 呪文と共にアレクサンドル一行は光に包まれる。 そして光が消えると目の前には透明な壁が現れていた。 「ふむ・・・」 ワグナーはおもむろに杖を取り 「ふん!」 「うおっ!?」 若い将軍に思いっきり殴りかかった。 同時に ガキンーー まるで鉄の塊を殴ったかのような大きな音がしそのすぐ後にドサッという音と少し送れてカランカランと乾いた音がした。 後者は杖が折れて床に落ちた音で前者は 「な、な・・・・・・?」 若い将軍が驚いてしりもちを着いた音だ。 「ほぉ、知らない間にまた腕を上げたようですね」 ワグナーは感心したようで首を縦に振る。 「上げたようですねじゃねぇだろ!?」 「では、準備が整ったみたいですね」 若い将軍が騒ぐのを華麗にスルーしワグナーはアレクサンドルへ向き直る。 「どうぞご無事で」 「うむ!」 そして遂にアレクサンドルはロストワールドへ足を踏み出した。
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