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まばゆい光の扉を抜けアレクサンドル一行は見知らぬ土地に立っていた。
城の地下だった場所はいつの間にか草原へと変わり青い空が広がる。
遠くには深緑生い茂る森と広大な海を見る事が出来る。
「すごい、ここが・・・・・・」
感嘆するミーティアの横を風が颯爽と吹き抜ける。
「ここが、ロストワールド」
ミーティアが感動する横で初老の将軍が怯えたように震えているのがひどく印象的だった。
「はっ、俺らの国じゃ拝めない絶景だな」
(確かに、な・・・・・・)
若い将軍の皮肉めいた言葉にアレクサンドルは小さく独白する。
「さ、あまりはしゃいでいる時間はない。シンシア頼むぞ」
自らの陰りを振り払うかのようにもう一人の魔術師、シンシアに凛として指示を出す。
「はっ!」
シンシアは長い銀の髪を揺らし
「αναξητηση・・・」
詠唱を始める。
「? なんの呪文を唱えてんだ?」
「囚人の魔力を探ってるんです」
若い将軍の疑問にミーティアが答える。
「開拓囚人には魔力が込められた首輪がかけられています。その魔力を探知して囚人の居場所を探すんです」
先程ガキ呼ばわりされたためかその口調は若干不機嫌そうだった。
「へぇ~ガキのくせに物知りなんだな」
「これぐらい常識だと思うんですけど・・・」
「何だと!?」
再び子供扱いされたミーティアは遂に毒を吐き、そっぽを向いた。
「こら、二人とも静かにしないか」
見かねたアレクサンドルが二人を諌める。
「くっ・・・・・・申し訳ありません」
若い将軍はバツが悪そうに謝りながらも横目でミーティアを睨んでいる。
「・・・・・・おかしい」
「どうした? シンシア」
呆れて嘆息していたアレクサンドルの耳にシンシアの困惑した声が届く。
「開拓囚人0496を捕捉出来ません」
「・・・・・・何?」
その報告にアレクサンドルは耳を疑う。
生きている限り首輪から魔力を感じるはずであり死んだ時もその情報が届くことになっている。
捕捉出来ないというのはまるで不可解であった。
「もっと集中して探ってみてくれ!」
「分かっています。しかし・・・はっ!?」
「今度は何だ!?」
「陛下、あれを」
焦りにより苛立つアレクサンドルに初老の将軍が声を掛ける。
彼もまたシンシアと同じ異変に気付いたのだ。
「複数の囚人がこちらに向かっています!」
そう報告を受けた時には複数の開拓囚人がこちらに突進を始めていた。
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