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全員が恐る恐る初老の将軍の視線に目を向ける。
彼がこんなにも怯えるものは一体何なのか?
全員が覚悟を決めて振り向いた。
しかし振り向いた先にはベヒモスのような魔物はおらず他の凶悪そうな魔物の姿も気配もなかった。
ただ
「や、奴だ!」
一人の囚人がたたずんでいた。
その囚人は自身より巨大な斧を携えてこちらを見ていた。
そしてその斧を地面に引きずりながらゆっくりとこちらに向かって来る。
「ひ、あぁぁ・・・・・・」
初老の将軍が剣を地面に落とししりもちを着いた。
「あ・・・・・・開拓囚人0496のようですね」
息をするのを思いだしかの様にシンシアが漏らす。
「おいおい、こいつがそうだっていうのかよ!?」
若い将軍が疑う様に言う。
それもそうだろう、彼から見たらただの囚人と変わらないのだから。
だが、その囚人に先程まで勇敢ともいえる行動を取っていた初老の将軍が怯えているという不可解な現実があった。
遂にその囚人がアレクサンドル一行の前に立つ。
身長はそれ程高くない。
服を着ていない上半身から見える体には無駄なく筋肉がついている。
クセがあり肩口より少し伸びている灰色の髪が風でなびいた。
つり上がった三白眼がギロリとこちらを向く。
「何の用だ?」
地獄の底から響くような低い声にミーティアは思わず身じろぎをする。
「あぁ!? 何の用だ? じゃねぇよ」
その態度が気に食わなかったのか若い将軍が食って掛かる。
アレクサンドルと初老の将軍が緊張を走らせたのも露知らず若い将軍はそのまま続ける。
「わざわざお前の様な囚人を出してやる為に来てやったんだよ! 大人しく俺達に従えばいいんだよ!!」
0496が右手をゆっくりと上げる。
(まずい!)
アレクサンドルが止めようとしたがもう遅かった。
若い将軍と初老の将軍が開拓囚人0496に抱く畏怖の差。
それはかの囚人が何をしてここに居るのかを知っているかいないかの差。
その差はそのまま生と死を分ける。
ガチャン
「ひう・・・・・・!」
大きな音がしたかと思った刹那ミーティアが吹き飛ぶ。
魔法を破られた反動に吹き飛んだのだ。
「・・・・・・あ?」
0496の右手が若い将軍の鎧を掴んでいた。
その右手が幾度もベヒモスの突進を防いだこの結界を破ったのを理解出来ぬまま
ドスン
「かはっ!」
若い将軍は地面に叩き付けられた。
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