第1話

2/9
前へ
/26ページ
次へ
世の中は、神と四大天使、そして下級天使―クリスティア―の3つから成っている。 大小異なれど、すべての者が背中に羽根を生やし、未だ停滞を知らない目まぐるしい発展の中で生活をしていた。 発展の中心である大都市ニルトは、昼であろうと夜であろうと眠ることを知らない。 絶えず音と光とクリスティア達に溢れている。 時刻は夜。 大通りから一本外れ、人通りの少ない道で上空にポツンと浮かぶ双子の月を見上げ、僕は小さくため息をついた。 「………貴方のため息、いい加減うるさいわ」 「……ミア」 背後から掛けられた聞き覚えのある声に振り向くと、どこからともなく現れた女性―ミア―は、いつもの微笑を保ったままそこに居た。 いつもの、と言っても最後に会ったのは1ヶ月も前だが。 「なにかお悩み?」 「いいや?特には」 僕がそう答えるとミアは、ふぅん、と興味無さげに呟いた。 月が綺麗な晩にふらっと現れてはふらっと消える彼女。 彼女について知っていることと言えば、名前がミア、ということだけだ。 ――本名かどうかも怪しいけど。 .
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加