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初めてミアと会ったのは今から3年前に遡る。
僕は大都市ニルトではなく、故郷サルマにいた。
サルマは自然に溢れていて、大都市のように発展に追われるような場所ではない。
村民は皆、自給自足の生活でやりくりしていて、お金が必要な時には他の村や少し大きな町で自分が作ったものを売り、生計を立てていた。
そんなサルマの山の中で倒れていたという僕をたまたま見つけた義父義母が介抱してくれた。
目を覚ました僕は、記憶が無くて。
どうして山に倒れていたのか、どうして名前や前居た場所を覚えていないのか……僕の他者との“違い”を義父義母は、それきり問いただす事は無かった。
僕に生活の仕方を教え、育ててくれた。
村にも馴染ませてくれたことをよく覚えている。
村に馴染んでからしばらくして、ミアと出会った。
確かその日も月が綺麗な晩で。
散歩がてら、野道を歩いていた僕の目の前に現れたのが彼女だった。
「こんばんは。月が綺麗ね」
「……そうですね」
村は狭いから村民とは皆顔馴染み。
だから見慣れないこの女に強く警戒心を抱いた。
関わらない方がいい、と早々に決めた僕は、会話をそこで終わらせ、何事も無かったかのように彼女の横を通りすぎた。
その瞬間。
「冷たいわね、羽根を持たない坊やは」
「!?」
ゾクリ、と背中に粟が立つ。
女が言った事は紛れもなく事実。
そして、村の中でも義父義母しか知らないはずの事実。
ざわざわとした嫌な感覚が全身を包み、悪寒がした。
「…な…んで……」
ようやく絞り出した声は自分でも驚く程弱く震えていた。
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