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そこは、雲の上だったかもしれない…
いや厳密には空に浮いていたのだろうが、何かしら足場があったはずだ。
…気づいたときには"そこ"から飛び降りていた。
…風が顔に当たっているのを感じる。
とても気分がいい、心がとても晴れやかだ。
「………………んん」
布団の中で目が覚めた。今は2月半ば、毛布を重ねて寒さをしのいでいる。
「………」
そういやなんか夢見てたような、と考えていたが。
「まいっか…」
モゾモゾしながら、また眼を閉じてしまった。
[You got mail!!
You got mail!!]
彼のケータイの着信音が鳴っている。
「…」
さっきから[ユーガットメール!!]という着信音がなりっぱなしだが、まったくケータイを取る気配がない。すぐ取らなくても大丈夫だとわかっているのだろう。
「…ん」
布団の中からスッと手を伸ばし近くにあるケータイを手に取った。
「………」
「……はぁ」
差出人のところには『ビッ〇ーズ』と書かれている。メールの内容を確認してから、待受画面に戻りケータイを閉じた。
彼の顔には<予想通り>と<落胆>の2つの文字が浮かんでいた。
まあ、もちろんん実際に彼の顔に書かれているわけではないが。
「またかよ…」
かつてモ〇ゲーのポイント欲しさに登録したサイトだ。
無料だし、買い物サイトなのでそのままでもいいだろう。
そう考えていたのだが、
案外使わない。
元々ネットオークションも信用できず使わないような彼が買い物サイトを利用するわけがない。
とはいえ解除も面倒なのでそのままにしている、といったところか。
「そういや、今何時だっけ…」
改めて手に握ったままのケータイを開き、日時を確認した。
[02/14日(火)07:34]
「まだ7時か…」
バイト休みであれば何時であろうと構わず眠っているくせに、何を気にしているのか。
春休み中の大学生は気楽なものである。
「………」
待受画面を凝視したままケータイを握り続けている。
いや、日時を見ているのだろうか?
「今年も来たか…」
なにやら神妙な表情をしている。
彼、滝沢 涼太は一体どうしたというのだろうか?
[02/14(火) 07:34]
バレンタインデー当日
つづく
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