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「どっかに異世界へ通じる門開いてないかな~…」
ボソリと呟く。
現実から目を背ける為に。
「…ね、ねえ禪(ゼン)…?お願い、出てきてよ…!」
暗く、分厚いカーテンのかかった俺の部屋の扉を叩き破らんばかりの勢いでノックしている無礼者は義姉の小金井 遥香(コガネイハルカ)。
…大学生で忙しい癖に、暇さえあればドア越しに話しかけてくる。
「あーウザイ」
愛用しているヘッドホンを耳に押し付ける。毎日毎日部屋の前で叫ばれる此方の身にもなれってんだ、全く。
「…禪!…はぁ…。…また来るから」
…諦めたようだ。
姉の足音が遠ざかる。
…やっと行ってくれた。
ため息を吐き、ゲーム機の電源を入れる。
「…………」
が、やりはじめてすぐにゲーム機を放り投げた―――
毎日がつまらない。
こんな、人のすねかじって暮らす日常が面白いなんて露ほども思わない…
俺は俗に言う引きこもりって奴だ。…半年前、始めた。
急に引きこもった俺を心配して、初めは色んな人が家にきた。
でも…人間は忘れる生き物だ。
2ヶ月もしない内に誰も来なくなった。
俺にとっては好都合だったが。
引きこもりを始めた時、ちょっとだけ後ろめたかった。
だって、親に心配をかけさせてしまうから。
「………。」
違う。
…今、嘘をついた。
俺は養子だ。
小金井家の主人(今の俺の養父)とは俺の親父が親友で、家族ぐるみで仲良くしていた。…だから、俺を残して家族全員が死んだ時に『私の家の養子にならないか』と言ってくれた。
養子と言う立場で小金井家を目にした。
小金井家の人達はみんな……優しかった。
幸せな家庭だなと思った。
……でも、小金井家の人達は、俺にとって眩しすぎたみたいだ。
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