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……さて。俺は、何かしただろうか。正直、冬樹は普段の感情表現がそれこそ乏しいので、こういったわかりやすい行動は有難い反面、原因がすぐにわからなくて困る。中身が意外と子供っぽいのも含め、こいつの考えは本当に読めない。
「……つむり、」
原因を考える悶々とした思考は、判りやすく不機嫌な声に中断された。ふむ、喋ってくれるなら聞いた方が早そうだ。そう判断し、早々に口を開く。
「俺、何かしたか?」
直球な質問に、冬樹は隠すことなく顔を顰めた。思い出すのも嫌だ、ってか。しかし、聞き出さなくてはいけない。下手をすれば俺の日常生活にも被害を及ぼすのが、冬樹だ。改善出来るところはしないと、後で後悔する。俺が。嫌われるの嫌だからな。
子供を宥めるような優しい声を意識しながら、口を開く。
「なぁ、冬樹。俺が何かしたなら、ちゃんと次から気をつける。だからさ、」
「今日、」
教えてくれるか?と続けようとした言葉は、変わらず不機嫌な声に遮られる。しかし答えてはくれるようなので文句は言うまい。
「今日の、昼。…お前、他の部署の女と、喋ってただろ。」
「…あぁ、そういう……。」
それだけ聞けば充分だった。
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