Sと病2

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 一日の行動をざっと思い返してみて、結局俺に原因が有るようには思えなかったので、意識を現実に戻す。と、いつの間にか目の前に金と蒼がちらついていて、次いで唇にやわらかな感触。数秒、俺に体温を分け与え、ぺろりと俺のそれを一舐めしてから離れた薄い唇は、上機嫌に弧を描いていた。 「……冬樹?」  わけがわからずに首を傾げると、冬樹はネクタイとYシャツを鷲掴みにしていた手を離して、俺の首に腕を回す。キスに香ったアルコールの匂いと、甘えるような仕草に、こいつまた一人で先に飲んで居やがったな、と思いつつ。どうしたんだよ、と靴を脱ぎながら問えば、冬樹は耳元で囁いた。 「有給とってくれなかった、仕返し。」  ……いや、確かに昨日、「明日、有給とって家に居てよ。」とは言われたが。まさか本気だったのかと一瞬疑い、けれど肩口から聞こえたクスクスという笑い声に、要するにキスする口実か、と息を吐いた。 了 .
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