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「いえ、さきほどの足であっていますよ」
すかさずルッツが指摘する。
「あら?そうだったの?ごめんなさいね、勘違いして」
舌打ちをしたいのを堪えながらマリベーラは、そしらぬフリを続ける。
「靴をぬがせて手当した方が良いと思いますよ。
足首だけひねったとはかぎらないのですから」
マリベーラは靴をぬがさず、そのままで手当てしたふりをしようとしたが、再びルッツに指摘された。
「それもそうですわね」
観念したのかマリベーラはルイディアナの靴を脱がす。
すると足の甲に、丸く赤い痕が露わになった。
「まあ!もしかしてこれはダンスの練習で、誤って踏んでしまった所かしら?
ごめんなさい、姫様が大丈夫と言うものだから対した事がないと信じてしまったわ」
白々しいほどの言い訳。
しかし、それが嘘だと言う証拠もない。
“さあ、どうする気かしら?”
開き直ったマリベーラは挑発的な顔で、ルッツを横目で見る。
「へえ、ダンスの練習で。
あなたから事前に頂いている授業予定表にはダンスの項目はありませんでしたが?」
「ええ。姫様がダンスが苦手とおっしゃっていたので急遽予定を変更して、教えていましたの」
まるで狸とキツネの化かし合いのように、ルッツとマリベーラの二人はお互い本心を隠しながら探りを入れていた。
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