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「こんな状態で教師を続けるほど、わたくしの神経は太くありませんわ。
もともと王室教師などやりたくありませんの!
命令されて仕方なく教えて頂けなのですから、辞めさせて頂きます」
マリベーラはそう吐き捨てると、作法室の扉を乱暴に開いた。
「後日で良いので正式な辞表を私宛に提出して下さい。
受理後、あなたの残った荷物を自宅に送らせて頂きます」
「どうぞ、ご勝手に」
そう言い残して、マリベーラはヒールの音を響かせながら去っていった。
「これでよろしいですか、姫様?」
「・・・あ、バレてた?」
「もちろん」
ルッツはにっこりと笑う。
「さきほど気にされていましたからね。
姫様から首にすれば彼女は今後、職を失う。
そうさせないためには自ら王宮教師を辞める必要がある。
正当な理由で辞めた場合なら、咎められる事もありませんからね。
彼女の場合、うまく正当理由を辞表に書くでしょう。
しかし、もしああ言って本当に教師を続けたらどうする気なんですか?」
「それならそれで良いかなっと思って。
体罰さえなければ私、彼女は教師として一流だと思うわ」
「器が大きいと言うか・・・素直ですね、本当に」
呆れたような、それでいて優しい瞳でルイディアナを見ながらルッツは微笑んだ。
「さて、とりあえず医療室に行きましょうか。
さきほど侍女達に聞いたら、最近ずっとお一人で入浴されているそうですね。
どうやら足の傷以外にも今までの傷があるみたいですから、この機会にきっちり診てもらいましょう」
「はい」
ルイディアナの足を気遣いながら、ルッツは姫と一緒に医療室へと向かった。
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