第二話 姫と専属医

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部屋から出る時、部屋の外で待機している護衛に顔を見られないよう ルイディアナは俯き、垂れてきた髪の毛で顔を隠しながら横を素通りした。 ザックスはそれをさらに気付かれないようにする為、ルイディアナの隣・・・護衛側の方を歩く。 「・・・」 一瞬ちらりと護衛騎士が、部屋から出てきたザックスとレオナに扮したルイディアナの方を見るが 声をかける事はなく、そのまますぐに目をそらされた。 「・・・もう、大丈夫かしら?」 廊下の角を曲がり、階段を降りながらルイディアナはザックスに小声でたずねる。 「・・・たぶん、な」 苦笑いしながらザックスは頷く。 「それでどこへ行くの?」 「うん?ああ、城の一階は姫さんほとんど行った事ないだろ?」 「うん。一階どころか自室がある階と、学習関係の部屋がある階以外はほとんど行かせてもらえなくて」 城下町が少し離れた場所にあるこの城は、一階と二階は使用人や兵士達が長期間城詰めでも快適に暮らせるような造りとなっている。 主に二階は宿舎や使用人の食堂などがあり、一階は小さな商店街のように色んなお店や娯楽施設などがあり、一般開放もされている。 その為、王族や貴族などにとっては逆に近寄りがたい場所になっているので、姫であるルイディアナも来ることは許されていなかった。 もちろん許可をとり、大勢護衛を連れて偵察に行く事は可能だが、その状態では一階の日常は全く楽しめない上、普段利用している者たちにとっても多大な迷惑をかけるだけだった。
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