第二話 姫と専属医

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中央前の席はすでに先客達にとられていたが、三列目のやや中央よりの場所が空いていた為 ザックスはルイディアナの手をとり、その席へと引っ張って行く。 「俺は食いもん買ってくるから、隣の席確保して置いてくれ」 ルイディアナが着座したのを見届けると、そう指示を出してザックスは劇場からやや離れた場所にある屋台へと向かった。 1人取り残されたルイディアナは不安そうにキョロキョロと辺りを見渡す。 「あ・・・」 辺りを見回していたルイディアナは見覚えのある姿を見て固まった。 そしてすぐさま見つからないように俯く。 「どうした、姫さん?」 そこへ両手に食べ物と飲み物を持ったザックスが戻ってきて声をかけた。 「あそこに・・・」 俯いたままルイディアナは見覚えのある人物のいる方を、小さく指差す。 「ん?ああ」 指差す方を確認したザックスは、肩をすくめ苦笑いを浮かべる。 「ばれ、たのかしら?」 「さぁな。ま、気にすんな」 不安そうな顔のルイディアナとは対照的にザックスは、おおらかに笑った。
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