第二話 姫と専属医

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『むかしむかしの物語。 今は無き国の賢王と呼ばれた王の生涯。 国を奪われた王が最後に選ぶのは国かそれとも・・・』 語り部の前口上が終わると、舞台横にいた少年が幕を開ける紐を引っ張った。 するすると滑らかに上へとめくられていく幕。 そしてその幕の裏には豪華な王座と凛々しい俳優の演じる王の姿があった。 こうして演劇は幕を開けた。 俳優達による熱演に、時折挟まる剣舞。 そして一座専門の楽隊による場面に合わせた音楽。 それらに心を震わせ、夢中で観覧するルイディアナは食べて良いと言われたにもかかわらず パンを食べる事も飲み物を口にする事も無く、ただ食い入るように舞台上を見つめていた。
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