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いつの間にか、私の近くに人がいなくなっていた。
逃げている…ようにも感じ取れる。
不思議に思っていると、誰かの視線を感じて、ふと振り返る。
そこには、女性が二人、遠目でこちらを見ていた。
―――どうしたんだろう。
自分の格好を見ても、ふつうの着物で。
周りと比べておかしいところはないはず。
不意に、誰かのヒソヒソ話が耳に入った。
「―――あれが、例の娘なの?」
「らしいわよ。“あの桜”の傍で“あの妖怪”といたところを見た人がいるらしいもの」
「なんて恐ろしい」
「なんでも、“あの妖怪”のお気に入りらしいわ」
「顔で選ばれているのかしらね。どちらにせよ、早く帰ってほしいものだわ」
クスクスと笑われて、頭が真っ白になった。
―――私は、人間に歓迎されない―――
胸が痛くて、苦しくて、私はその場にうずくまった。
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