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「―――あの子、誰ですか?」
町の一角で、若い侍が見知らぬ男性に尋ねた。
侍が指さす先には―――美桜がいる。
美桜は目を輝かせながら、町を練り歩いていた。
男性は、困ったように口ごもりながらも答える。
「あの子は…妖怪みたいなモンだ。とにかく関わるな」
「あんなに美しい方なのに、哀れですね」
長い黒髪を高い位置で一纏めにし、腰に刀を差した侍は端正な顔立ちをしていた。
彼は美桜から目を離さない。
「似ているんですよ。私が仕えている御方に…」
そのとき、美桜がうずくまった。
「おいおい、何があったんだ。あんまり刺激しないほうが…」
隣の男性が顔を青ざめさせる。
「私が、行ってきましょう」
そう言って、若い侍は美桜のもとへと駆け寄っていった。
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