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うずくまった美桜を、誰かが見下ろす。
「……おい」
声に気付いた美桜は、涙目のまま上を見上げた。
そこには。
「……え」
美桜は目を見開いた。
何せ狂牙が、いつもの涼しげな顔で立っていたのだから。
「どうしてここに…」
「…お前の居場所なんざ、俺には筒抜けだ」
狂牙は勝ち誇った様に口角を上げる。
「これに懲りて勝手なことすんなよ。俺がわざわざ迎えに来る羽目になっただろーが」
周りの人々は、そそくさとその場を去っていく。
ただ一人、若き侍だけが、建物の陰からその様子を観察していた。
「似ている…」
そして、切れ長の目を細める。
「奥方様に―――」
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