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若侍の意図など知りもせず、美桜は狂牙に抱きついた。
「…狂牙が悪いの」
そして、涙目で狂牙を見上げる。
「美桜を置いてったりするから…」
「いじけんな。子供か、お前は」
呆れた目で、狂牙は美桜を見遣る。
「子供だもん。まだ16歳だから」
「……まだ、か」
狂牙は切なげに笑った。
美桜はまだ、事実を知らない。
―――お前は、俺たち妖怪にとって食糧なんだ。
そんな台詞は、口が裂けても言えなかった。
美桜が全てを知ってしまったとき。
『さよなら』
手から離れていく姿が、何度も目に浮かぶから。
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