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「狂牙っ」
満面の笑みを浮かべた美桜が、洞窟に入ってきた。
「何だ美桜」
狂牙はうんざりしたような不機嫌な顔で、美桜を見やる。
「上機嫌だな。いつものことだが」
「ねぇ、今度町で祭りがあるんだって。狂牙と行きたいな」
美桜は嬉しげに、狂牙の背中に飛びついた。
狂牙は黙り込み、美桜の額を片手で押しやった。
「……行かねぇ」
「…狂牙が行かないのなら、私も行かない。狂牙と行きたかったなー…」
そう言って、美桜は困った顔で狂牙に微笑みかけた。
「………」
狂牙は黙ってうなじを掻いた。
「お前、ずる賢いよな」
途端に、美桜の顔が明るくなった。
「いいの!?やったぁっ」
「……」
狂牙は黙って洞窟を出ていった。
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