移動

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どれくらい車に揺られていたのか わからない。 誰も一言も発さなかったし、真っ暗な視界・・・時間の感覚は皆無だった。始めは 何処に向かってるのか。と全身を耳にアンテナにと頑張ってみたも全然わからず・・・ 結局目隠しのまま、車を降ろされ歩かされるはめになった。 恐る恐る掴まれた腕を引っ張られるがまま歩いて行った 目隠しを外されたのは えらくひんやりした場所だった 「え・・・」 牢屋。 その言葉がピッタリの場所にトランクが運ばれてきた。 「あっ・・・」 「勝手に開けてやれ」 静は その言葉を聞かずとも既に勝手に手をかけていた しかし、歩は まだ目を硬く瞑ったまま 男達が鍵をかけ足音が遠ざかって行く。静が歩を揺さぶる 「大丈夫?ねぇ、歩君?」 うっすら目を開けたと思うと 一気に目が開いた 「ひゃっ・・・」 静の服にしがみつき震える姿は尋常じゃない 「ちょ、ど、どうしたの?歩君」 尻餅ついた状態の静の膝の上から見上げる歩の呼吸が浅い 「ちょっと・・・あ・・・落ち着いて?ほら、ゆっくりだよ」 ハクハクと口をして 何か言おうとしているが声は出ず ただ苦しげだ 「いいから、ちょっと息を ゆっくり吐いて。吸ってばっかじゃ駄目・・・歩」 ギュッと抱きしめ背中をポンポンと母親が子供にするかのようにし続けた 「もう、大丈夫?苦しくない?」 ゆっくり、コクンと頷いた歩の息は 大丈夫そうだったが顔色は悪いままだった 「ごめん・・・なさい。取り乱しちゃって・・・」 「大丈夫だよ、僕は。それより、顔色 凄く悪い・・・いいよ、そのままで」 歩は膝枕をさて横になっている 「狭くて・・・暗いの・・・駄目なんだ」 今にも泣きそうな顔で声を絞り出した 静が優しく頭を撫でてくれる
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