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「葵、俺朝練あるからまた後でな。」
ふと掛けられた亮太の声で我に返る。
亮太はサッカー部でしかも一年生なのにレギュラーなのだ。
「うん、頑張ってね」
校門の前で別れて、僕は校舎へ向けて足を運ぶ。
キャーキャーと聞こえる女の子たちの歓声はたぶん亮太に向けられたものだろう。
慣れたとはいえ、やっぱり心配だ、浮気しないかとか。
「おはよー葵」
玄関で靴を履き替えていると、突然肩を叩かれ振り返ると
「おはよ徹」
僕の親友の徹だ。
徹は爽やかだけどとっても面白くて、頼りになる存在だ。
「あれ?亮太は朝練?」
「うん、大会近いんだってさ」
「レギュラーだもんなぁ」
そして徹はただひとり、僕と亮太の関係を知っている人物でもあるのだ。
「で、もちろん応援しに行くんだろ?」
「う、うん。お弁当も作っちゃおうかな、なんて」
「うわーさすが彼女!やるね~」
「もーあんま大きな声で言わないでよ。」
仮にでも人通りが多い廊下なんだから。
僕は徹を睨んで、ひとり足早に教室へと向かった。
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