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「…あの。出来ればそれを下ろしてくれないかな?」
優男だった。苦笑いを浮かべながら、降参するように両手を挙げながら話す男を一言で評するなら、それがもっとも適切だ。
最も、それでいて隙のない身のこなしだったからこそ、彼は自身が召喚した使い魔に凶器を向けられているのだが。
「ええ。確認が済めばすぐにでも。アナタがボクの主のフリをしている可能性も0ではありませんしね?」
「そうそう“油田公的”ってね。」
「“油断大敵“?」
「そうそれ。」
男の子のような声が響くが、男は眉を顰める。この場には自分以外、自動二輪から降りて自分に狙いを定める使い魔しかいない。
とはいえ、そんなやり取りの間も銃口は向けられたままピクリとも動かず、相手は自分から目を離さない。男は出来る限りゆっくりと、敵対行動と取られぬよう意識して腕を捲る。
「これで良いかな?」
左肩に刻まれた“証”を相手に見せつつ、必要以上に近づかぬよう気をつける。相手は慎重に確認した後、やっと凶器を腰に収めた。
「…ええ。アナタをボクの主であると認めました。先程の無礼をお詫びします。」
帽子を胸にやり頭を下げる相手に、男は微笑みながら頷く。
「構わないよ。むしろ、それくらい用心深い方が頼もしい。ところで君は、やはり騎兵なのかな?」
自動二輪からそう判断したのだが、相手は首を横に振る。
「いいえ。どうやらボクが買われたのは、射撃の腕前の方だったようで。残念ながら弓兵として現界しました。」
さほど残念そうでもない声に、またも男の子のような声が続く。
「やっぱり騎兵ともなると、もっと凄いのに乗ってるのかな?」
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