エピローグ

6/18
前へ
/858ページ
次へ
三日後。 久しぶりの休みになった俺は、とある大通りの路肩にバイクを止めて歩道の花壇に腰掛け、缶コーヒーを片手にタバコを吹かしながら、壁に寄りかかり時間を潰していた。 この先にある跳ね橋で、なにやら映画の撮影が行われる為に通行規制がかかっていたのだ。 その時、自販機の脇にあるガラス張りのドアがスッと開くと、リュックを背負った小学生くらいの男の子が現れる。 「こんにちはっ」 俺を見た男の子が、元気に挨拶して頭を下げる。 へぇ、礼儀正しいガキだな…… 「おうっ、こんちはっ」 俺はフッと微笑み挨拶を返す。 子供が出来たガラスのドアに、武真会館という文字が書いてあるのが視界に入る。 なるほど。空手やってんのか、こいつ…… その子は自販機の前に立ち、誰かを待っているような様子だった。 その直後、一台の車が俺のバイクの後ろにスッと止まった気配がする。 俺の背後で「ダン、ダンッ!」とドアの閉まる音がする。 「おいっ、お前っ!こんな所にバイクなんか止めて何やってるんだっ!!」 いきなり高圧的な男の声が飛んで来る。 「聞いてるのかっ!お前っ!!」 そいつの言葉を無視した俺の左肩を、グイッと引きながらその男が再び言葉を放つ。 チッ、サツか……面倒くせぇなぁ…… 「うっせぇなぁ。一服してんだけだろっ」 俺はキッと左を見上げ男の顔を見ると、ウザそうに口を開く。 現れた男はスーツを着た刑事だった。 「なんだ、お前っ。その口のきき方はっ!引っ張ってやっても良いんだぞ」 スーツ姿の男が怒鳴りながら、俺の胸ぐらを掴みグイッと引き上げる。 「ちょっと、止めなさいっ!」 すると、背後から男を止める女の声がする。 「ですが、満理子さんっ。こいつ生意気っすよ」 男は俺の胸からバッと右手を離すと、先輩らしき女に向かって弁解するかのように言った。
/858ページ

最初のコメントを投稿しよう!

951人が本棚に入れています
本棚に追加