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三日後。
久しぶりの休みになった俺は、とある大通りの路肩にバイクを止めて歩道の花壇に腰掛け、缶コーヒーを片手にタバコを吹かしながら、壁に寄りかかり時間を潰していた。
この先にある跳ね橋で、なにやら映画の撮影が行われる為に通行規制がかかっていたのだ。
その時、自販機の脇にあるガラス張りのドアがスッと開くと、リュックを背負った小学生くらいの男の子が現れる。
「こんにちはっ」
俺を見た男の子が、元気に挨拶して頭を下げる。
へぇ、礼儀正しいガキだな……
「おうっ、こんちはっ」
俺はフッと微笑み挨拶を返す。
子供が出来たガラスのドアに、武真会館という文字が書いてあるのが視界に入る。
なるほど。空手やってんのか、こいつ……
その子は自販機の前に立ち、誰かを待っているような様子だった。
その直後、一台の車が俺のバイクの後ろにスッと止まった気配がする。
俺の背後で「ダン、ダンッ!」とドアの閉まる音がする。
「おいっ、お前っ!こんな所にバイクなんか止めて何やってるんだっ!!」
いきなり高圧的な男の声が飛んで来る。
「聞いてるのかっ!お前っ!!」
そいつの言葉を無視した俺の左肩を、グイッと引きながらその男が再び言葉を放つ。
チッ、サツか……面倒くせぇなぁ……
「うっせぇなぁ。一服してんだけだろっ」
俺はキッと左を見上げ男の顔を見ると、ウザそうに口を開く。
現れた男はスーツを着た刑事だった。
「なんだ、お前っ。その口のきき方はっ!引っ張ってやっても良いんだぞ」
スーツ姿の男が怒鳴りながら、俺の胸ぐらを掴みグイッと引き上げる。
「ちょっと、止めなさいっ!」
すると、背後から男を止める女の声がする。
「ですが、満理子さんっ。こいつ生意気っすよ」
男は俺の胸からバッと右手を離すと、先輩らしき女に向かって弁解するかのように言った。
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