エピローグ

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俺は背後から現れた女の刑事に視線を向ける。 「あなたの聞き方が悪いっ」 黒髪で凛とした立ち姿をしたその女刑事が、男を一喝する様に言葉を放ちスッと左を見る。 「ごめんね。恐くないからね」 女刑事は自販機の横で顔を曇らせている男の子にニコッと笑い話しかけた。 「あなたも、ごめんね。ここの先で映画の撮影やってて、変な奴が居ないか私達は見回っているの」 そして直ぐに、俺に視線を移した女刑事が笑顔のまま話しかけて来る。 「あっ、い、いえっ。俺は、映画の撮影なんて興味無い……ですから」 俺は思わず、その女刑事に敬語で話してしまった。 「とうちゃんっ!」 男の子の嬉しそうな声が響く。 二人の刑事と俺は男の子が視線を送る左に、同時に視線を向ける。 「おう、俊介っ。待たしたなっ」 上下ジャージを着た男が、笑顔で男の子を見つめながら近づいて来る。 えれぇ、ゴツいおっさんだな…… その場の雰囲気に違和感を感じた男の子の父親が、俺と刑事をチラリと見る。 「お父様でらっしゃいますか?私達のせいでお子さんを恐がらせてしまったようで、申し訳ありませんでした」 男の子の近くにいた女刑事が男の子の父親に言葉をかけ頭を下げると、胸の内ポケットから警察手帳を取り出しパッと開いて父親に見せる。 「警視庁捜査一課の、弥永満理子と申します」 女刑事は丁寧に自分の身分を証す。 「はい。この子の父で、武真会館新喜宿本部の師範代をしております。宮本信夫と申します……」 男の子の父親が、女刑事に応えながら原因となったと思われる俺に一瞬、鋭い視線をギロリと向ける。 バカヤロぉ、俺のせいじゃねぇぞ……にしても、このおっさんも空手やってんのか。どうりで、ゴツい訳だ…… 父親と二人の刑事が話してる間、俺はそう思っていた。 「きゃあぁぁぁっっ!!!涼子ちゃぁぁんっ!!!弘くぅぅんっ!!!」 その時、大通りの先から悲鳴のような黄色い歓声が湧き上がる。 人混みが周りを囲む中、竹内涼子と井上弘が姿を現すと大通りに止めてあった真っ赤なスポーツカーに乗り込む。 二人の姿を見た俺の心に、何故かわからないがムズムズと何かが込み上げてくる。 その瞬間、俺はバッとバイクに飛び乗りエンジンをかけると、すかさずリアタイヤを鳴らしバイクを急発進させた。
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