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バイクと男の人が太陽に重なる。
バイクに乗った男の人が左手を離し私達にスッと振り返る。
逆光で暗くなった男の人の顔が、私と弘くんを見つめフッと笑顔になる。
トクンッ……
その姿に、私の胸が小さく高鳴る。
私は何故かその人に向かってニコッと微笑んだ。
バイクがゆっくりと跳ね橋の向こうに消えて行く。
そしてバイクは跳ね橋の向こうに着地すると、そのまま何事も無かったように物凄いスピードで走り去って行った。
「何だったんだろうな今の……」
隣で弘くんが呆然としたような声で口を開く。
私はスッと振り向き弘くんに視線を向ける。
「でも……何故かあいつに、あの言葉を言われて嬉しいのもあるけど、心が温かくなったような気がするな……」
弘くんは、もうすでにいなくなったバイクと男の人の残像を見つめるように跳ね橋の先端を見つめ、静かにそう言った。
私も同じだ……あの人に幸せになれよと言われ、その笑顔を見た瞬間に心に温かいものに包まれた気がした……
私はスッと跳ね橋の先に視線を移し、青空と輝く太陽を目を細めて見る。
うんっ……
私は穏やかな気持ちで決断する。
そして再び弘くんに視線を送り、フッと笑みをたたえ見つめる。
「いいよ……」
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