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ーーーー西橋鉄二sideーーーー
竹内涼子と井上弘の映画の撮影に乱入してから、一ヶ月ちょっとの日が過ぎようとしている。
撮影に乱入したその日のニュースで、交差点に進入したバイクが竹内涼子と井上弘の乗った赤いスポーツカーを追い抜き、跳ね橋をそのまま飛び越える姿を遠くから捕らえた映像が、その日だけで何度も流されていた。
ニュースで俺は、目立ちたがり屋のどうしようもない奴というレッテルを張られていたが、何故か翌日のテレビであれは撮影の一貫だったと訂正され、騒ぎは一夜で終わりを告げる事となった。
たぶん、あの二人がそういう事にしたんだろう。
小さ過ぎてバイクの車種も俺本人の事もわからないくらいの映像でしか無かったが、俺はあれ以来、白いライダースを封印していた。
寒さもかなり進み、冷たくてピィンと張り詰めた空気がバイクで走る俺の頬を斬り裂くように撫でる。
いつも通る道を走っていると、先に在る滅多に止まることの無い交差点の信号がパッと黄色に変わる。
いつもなら一気に加速して黄色のうちにすり抜けようとするが、その日は何故かスピードを緩め赤に変わった交差点で止まった。
んっ?……
その時、ふっと左に向けた視線の先に、街路樹の隙間から建物の二階に日本伝統刺青(にほんでんとうしせい)彫文游藝所(ほりぶんゆうげいしょ)と書かれた文字が視界に入る。
日本伝統刺青。彫文游藝所……こんなとこに刺青(いれずみ)屋なんてあったっけかな……
刺青という文字が何故か気になった俺は、信号が青に変わると交差点から歩道にバイクを乗り入れ、彫文游藝所の入った建物の下にバイクを止める。
エンジンを切りバイクを降りた俺は二階を見上げる。
その建物は三階建てで、二階の彫文游藝所には外階段で行くようになっていた。
さてと、着てはみたもののどうすっかな……
俺は自分でも何故気になるのかわからず少し躊躇い、ズボンのポケットからタバコを取り出し火をつける。
バイクのシートに腰掛けタバコを吹かしていると、右の方から歩いて来た一人の女の娘が俺の視界に入って来た。
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