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どこでだ……
俺は瞬時に記憶を辿る。
「わかんなくて、あたりめぇかぁ……あれから十年以上も経ってんもんな」
彫松が俺に視線を戻し、俺をジッと見ると口を開いてフッと笑う。
十年以上だとっ……
「俺は、直ぐにわかったぜっ。てっちゃん……まあ、この街じゃ有名人だしな。いろんな意味で」
彫松は、そう言うとカッカッカッと笑った。
その時、彫松の作務衣の襟元から覗く火傷の痕が俺の視界に入る。
あれは……しっ……
「信ちゃんかっ?」
俺は確かめるように言葉を放つ。
彫松がニッと白い歯を見せる。
「やっとわかったかよ。このやろぉぉ」
俺は思わずニカッと笑う。
「久しぶりだなぁ、信ちゃんっ。いつからこっち居んだよ」
子供の頃に別れた信ちゃんに再会した俺は、嬉しさが込み上げ口を開いた。
「ちょっと、いろいろあってな……向こうで高校卒業すると同時にこっち戻って、ここの師匠に弟子入りしたんだ……」
信ちゃんはフッとその顔を少し曇らせそう言った。
あんまり、その辺は聞かねぇ方がいいみてぇだな……
「それより、鉄っちゃん。ここに来たってことは、刺青入れんのかっ?」
信ちゃんはすぐさま笑顔に戻り聞いてくる。
「いやっ、話しだけでも聞いてみっかってな」
俺はそう答えてニッと笑った。
「彫松さん。この人、知ってるんですか?」
突然の状況に、信ちゃんに美優と呼ばれた女の娘が驚いたように尋ねる。
「ああ。こいつは俺がガキの頃に別れた、幼馴染みの西橋鉄二ってやつだ」
信ちゃんは、美優という女の娘に笑顔を向けながら説明する。
「西橋、鉄二……」
ボソッと呟くように美優という娘が声を漏らす。
その声に、俺はスッと視線を美優という娘に向ける。
「じゃっ、じゃあ、西橋さんっ。文は居ないみたいですけど、中に入りましょうかっ……」
美優という娘は俺の視線に気づき、ハッとして俺との視線を外しそう言って階段を上がって行った。
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