エピローグ

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彫文游藝所の中に入ると、中に居た坊主頭で左横顔には縦に長い傷がある、体のゴツい彫秀さんという信ちゃんの兄弟子が笑顔で俺を迎えてくれる。 俺は、信ちゃんに紹介され彫秀さんと挨拶を交すと、少し彫文游藝所の事や刺青の事について話しをする。 彫文游藝所には師匠である彫文さんの他に、彫光さんという彫師がいる。 その彫光さんは、信ちゃんの兄弟子で彫秀さんの弟弟子。 今日、彫文さんの弟弟子である外国人のルークという人と一緒に、師匠の彫文さんに代わりオランダで開催されるタトゥフェスに向かったそうだ。 彫文さんは、そのルークと彫光さんを空港に送りに行っていると、彫秀さんが笑顔で説明してくれる。 それから美優という娘とカッペとい奴も加わり、俺達はただの普段話をしていた。 「やあぁぁだ、文ちゃんっ。あたしの、おパンツ見ないでよぉぉ……」 小一時間ほど経った時、外階段の方から騒がしい声が聞こえる。 「誰が、お前のピンクのパンツなんか見かっ」 なんだっ?…… きゃあきゃあと騒がしい女の声と同時に、カン、カン、カンッと外階段を登って来る二つの靴音がする。 「キャアァァ。ピンクのって、文ちゃんやっぱりちゃんとあたしのおパンツ見てんじゃないっ」 騒がしい声が、直ぐそこまでやって来る。 「あほかぁ。見たとやなかばぁい、お前が勝手に見せたとやろぉがぁ。ガハハハハッ……」 下から上がって来た男が、ふざけた様にそう言って楽しそうに声を上げ笑った。 「で……お前はなんで、俺(おい)について来よるとやっ」 男の言葉と同時に、彫文游藝所のドアノブがガチャッと音を鳴らす。 「やだぁぁ。それは、愛する文ちゃんと一緒に居たいからに決まってんじゃないのよぉ」 女の声が響き渡った次の瞬間、彫文游藝所のドアが一気にバッと開け広げられる。 そこに立つ一人の男の姿が、俺の視界にバンッと飛び込んで来る。 「ばってん、偬次に愛されてもなぁ。ガハハハハッ……」 ドアを開けた男は、右後ろを向いて女にそう言うと、声を上げて笑いながらこっちに振り返った。 「キャアァァ、文ちゃんっ。その名前はやめてぇぇ。あたしのこと、ちゃんと麗香って呼んでっ」 女は恥ずかしそうに手をバタバタして声を上げる。 偬次って……この女っ、男かよっ……
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