エピローグ

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見ためが完璧に女の姿をしていたその男?は、俗にニューハーフと称されるオカマちゃんだった。 それに、文ちゃんって…… 「文っ!!」 その時、恥ずかさか怒りか顔を真っ赤に染めた美優がバッと立ち上がり、ドアの前に立つ男を睨みつけて声を張り上げる。 やっぱ、この惚けたおっさんが…… 「あっ、ただいまっ」 美優の声に気づいた男が、こっちに向かって惚けた顔で口を開いた。 彫文だっ…… 彫文さんは鋭い眼光で睨む美優に、バツが悪そうに頭をポリポリと掻きながら彫文游藝所の中に入って来る。 その後ろに、男?女?が続く。 「ハロぉぉ、美優ちゃんっ。今日もかわいいわねぇ。羨ましいっ……でも、美優ちゃんは笑顔の方がもっとかわいいわよっ」 男女が怒っている美優に視線を送り、そう言ってパチリとウインクする。 「でも、麗香姉ぇ。だって、文のやつが……」 美優は男女に視線を送り言葉をかける。 男女がピクンッと俺に気づき視線をスッと向ける。 「あらっ、いい男っ」 そう言うと、男女はマジマジと俺を見つめる。 「ふぅぅんっ……なるほどぉぉ。そういう事ねぇぇ……」 男女は意味深な発言をしてスッと美優に視線を戻すと、美優を見つめてニコッと笑った。 するとその瞬間、美優の顔がなぜか真っ赤に染まり男女から慌てて視線を外す。 「それで、秀っ。こちらの方は?」 惚けた顔からスッと表情を変えた彫文さんが、彫秀さんに視線を向け真面目なトーンで口を開く。 「おやっさんっ。こちらの方は刺青についてお話しを聞きに来られた、西橋さんと言われる方です。偶然にも、松の幼馴染みだそうです」 彫秀さんは、丁寧な言葉で師匠に俺のことを紹介する。 「へぇ、そうですか。松の……それで、西橋さんは刺青に興味がお有りでっ?」 彫文さんは俺をジッと見つめ、ニコッと笑いかけるとそう言った。 「興味というか、さっき信号で止まった時に、ここの刺青という文字を見て……なぜか気になったんです……」 彫文さんの眼を見てそう答えていた俺は、その瞬間にふっとガキの頃の出来事を思い出し、ハッとしてソファーの右隣りに座っている信ちゃんにパッと視線を向ける。 あれだっ……あの時から、俺は…… 信ちゃんが、やっと気づいたかと言うかのように俺を見つめニッと笑う。
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