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「俺に、刺青入れてくれないっすか……」
俺は文さんの眼をグッと見つめ落ち着いたトーンでそう言った。
「別に入れるとは構わんばってん、ほんとに良かとっ?さっきも言うたばってん、じっくり考えてからでも良かとよ」
文さんは俺の眼を見つめ返して口を開く。
「ちゃんと考えて出した決断です……それと、もう一つ……」
俺は文さんの眼を見つめそう答えると、ギュッと顔を引き締め言葉を止め間をあける。
「俺を、文さんの弟子にして下さい」
その言葉を聞いた、美優とカッペが驚いたような顔をしている。
麗香はニッと笑う。
文さんは腕組みをしてソファーの背もたれに深く寄りかかると、クッと眉間に皺を寄せて考え込む。
その時、文さんの口元がまるで嬉しさを堪えているかのように、微かにクッと上がり笑ったように見えた。
今……笑ったよな……
すると文さんがスッと背もたれに沈めていた上半身を起こす。
「わかったばい。本気で刺青師になりたかなら、何時からでも来れば良かよ。そのかわり修行は厳しかばいっ」
真剣な表情で俺の眼を見て口を開いた文さんの眼を見つめ返した俺は、眼に力を入れて力強くグッと頷く。
「で……もし刺青入れるなら、何処に何のモチーフば入れようとかってあると?」
フッと表情を和らげた文さんが、俺に尋ねる。
頭の中に何故か、あるモチーフの刺青を施した自分の後ろ姿がフッと浮かぶ。
「背中に……」
俺はニッと笑う。
「不動明王を……」
ーーENDーー
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