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いつもの夕食の時間、いつも変わらない騒がしい中、一向に箸が進んでいない沖田がそこにいた。
それを目にした永倉新八が彼なりの気遣いをしたつもりで、自分の膳を沖田の前にドンッと置くと、「食わねーなら、もらうぞ。」と言った。
その様子を見ていた藤堂平助、原田左之助らが、ばつが悪そうな顔をして見守る。
案の定、永倉の失言に沖田は無言のまま睨み付けた。
永倉 「な、な、なんだよ。元気ねーから、慰めに来てやってんのによ。」
沖田 「さっきから、ごちゃごちゃ五月蝿いんだよ。近藤さんが御飯も食べられないくらい体調よくないのに、僕だけ食べるなんてそんなこと、できない。」
睨み付けたまま永倉に吐き出すと、立ち上がりそのまま何処かへいってしまった。
永倉 「なんだよ…。」
藤堂 「新八っつあん、少しはそっとしておいてあげるってことしなきゃ。」
原田 「そうだぞ。新八には、そこんとこが欠けてんだ。」
藤堂と原田は御飯を頬張りながら呆れた声で言うと永倉が、口を曲げ「分かってら」と吐き出した。
藤堂 「総司の奴、飯食わねーのかな。」
原田 「あ、貰おうってんなら止めとけよ。」
藤堂 「そんなこと思ってねーって。ただ、何も食わねぇのは良くないしさ、し、心配してんだよ俺だって。」
目線を横にずらし溜め息混じりに言う藤堂に斎藤が口を開いた。
斎藤 「後で部屋に持っていく。総司は近藤局長のとこにいるだろうからな。」
そんな斎藤に深い溜め息をついた土方歳三が声を荒くして言う。
土方 「甘やかすな!食べたくなければ食べなくていい!」
藤堂 「そうかもだけどさ、総司の気持ちも考えてやってくれよ。」
土方の言葉に納得いかない様子で藤堂は反論したが、「考えても仕方ねーだろ。本人が立ち直るしかないんだからよ。」という一言に何も言えず、静まり返った広間で御飯の続きを食べはじめた。
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