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玲菜は息を切らし、必死に呼吸を整える。
ひかるはその目の前に、手に持ったままのバッタを突き出した。
「ヒイッ!」
腰が抜けたらしく、へなへなと地面にへたり込む。ひかるはさらにバッタを玲菜の顔に近付けていく。玲菜は目に涙をいっぱいに溜め、激しく首を横に振っている。
「僕が助かる道を一緒に探してほしい。あと六日、全力を尽くしてその方法を探す。それで駄目なら、政府に僕を差し出すんだ。勿論僕には手を出さない。わかったね?」
今度は縦に首を振る。ひかるはそれを見て、バッタを玲菜から遠ざけ、放してやった。
「――覚えてなさい」
まだ腰が抜けたままなのか、玲菜は地面に尻を着けたままひかるを恨みがましげな目で見上げた。
「ごめん……。でもこれしかなかったんだ。立てる?」
ひかるは手を差し出し、玲菜は少しの間逡巡したようだったがその手を取った。立ち上がらせ、まだ足元がおぼつかないようなので腕を回して支える。
「――いいわ。約束は守ってあげる。ただし、この約束はあなたを政府に引き渡すまで。それ以降は勝手にやらせてもらうわ」
「わかったよ」
ひかるはそう言って、玲菜と一緒に豪奢な屋敷の中に入っていった。
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