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ひかるにはあらゆる優遇措置が取られた。望む物は何でも用意しようと院長は言った。
「助けてください」
「無理だね」
最大の望みを口にしたが呆気なく一蹴された。当たり前である。
この最大の望みを無視されたことで、優遇措置とやらが恐ろしく馬鹿馬鹿しく感じられるようになった。どうせ死ぬなら残りの人生を最大限楽しく生きよう――とはならず、ただ膨れ上がる絶望に押し潰されるだけだった。
鬱々と己を憂い、一週間後には射出される。ただでさえ陰鬱な気分に、現実はこれでもかと拍車をかける。
この部屋から外に出ることは禁じられていた。地球を破壊する爆弾を抱えた人間など危なっかしくて外には出せないのだろう。行動も全てカメラで監視され、自由はなかった。
この白い部屋には窓も時計もなく、時間の概念を忘れてしまいそうだった。外が夜になると照明が抑えられるので辛うじて眠る時間はわかったが、それ以外の情報は何も得られない。
目覚めたのは照明が強くなり、瞼の裏が白くなったのを感じたからだった。二日目の朝。あと六日でひかるは宇宙に放り出される。
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