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安堵の笑みを見せ、ヘラッと表情を崩したあたしに訝しげに顔を歪める成澤恭介。
「その人を無言にさせるような顔やめろ。
だいたいそんな緩い顔してるからお父さんに頼りねぇと思われんだよ。」
「いやいや、安心した表情ですよ、これ。
…………ってか別に頼りなくねぇし!!!!」
ボーッとしていたあたしは成澤恭介の言葉に反論する。
「…………………。」
「なんだよ。その変なものを見る目は?」
「……………。
い~や?別に。
さ、早く教室行こうぜ。
トイレはトイレする場所だからな。」
ツンツンと那留のおでこを人差し指で突いた成澤恭介は当たり前なことを述べ教室へと向かった。
那留とお父さんの会話に“愛娘”という言葉が出てきたことなど那留は全く気づいていなかった。
(愛娘とか言ってなかったか?)
ましてや廊下を歩きながら、成澤恭介は先ほどの電話の内容に頭を傾げていたことも知らずにいた。
‐‥‐‥‐‥‐‥
教室へ行けば、苺ミルクとかかれたパッケージの紙パックを右手に要の前の席に座る男と話している要がいた。
何やら随分盛り上がっているようで、遠くから見ても分かるほど輝かしい雰囲気を放っていた。
「何だ、あのいかにも近寄らない方が良いっていうようなあいつらは。」
「あんたもそう思う?
俺も体が近寄るなって危険信号放ってるよ。」
恐ろしいものでも見たかのように言ったあたしに、成澤恭介もそのただならぬ雰囲気を読みとったのかゴクンと喉を鳴らし言う。
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