まえがき

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   漢朝。 それは中華を支配し、以後四百年もの盛隆を極めた大王朝である。 三国志とは、黄巾党の乱を経て後漢朝廷が崩壊すると同時に、各地で名乗りを挙げた将が己の武勇を恃(タノ)み、あるいは知謀を振り撒いて、覇を競い合った時代だった。 魏の礎を築いた曹操(ソウソウ)、蜀漢を建興した劉備(リュウビ)、父と兄の後を継いで呉を建国した孫権(ソンケン)などが三国志の主役である。 あるいは武将として、豪傑と謳われた劉備の義弟関羽(カンウ)・張飛(チョウヒ)などさまざまな個性的キャラクターが登場し、その力をあますことなく発揮した時代でもある。 時に人を斬り殺し肉を食らった者が英雄とされ、君臣の契りよりも母への孝行を優先した者が祠を建てられた。 数多の勇将が私兵を率いてわが物顔で戦場を闊歩できた乱世。 命を懸けて後世に名を残そうと奮闘した時代であった。
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