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丘建。
鍾会の子飼いの将で、まだまだ小粒だった。
それがこの叛乱を誘発させたとは思えないが、鍾会には思い当たるところがあったのだろう。
喉笛を食いちぎらんとする勢いである。
それも手遅れだと、姜維は思っていた。
今さらなにをしても、間に合わない。
指揮官のいない叛乱軍は救い出すべき者達が殺されようと止まることはない。
止まるとしたら、目標を抹殺した時だけである。
むしろ扇動しているのが囚われている将校であるなら、彼らが死んだ時、この叛乱は留まるところを知らない大災害になる危険もあった。
とにかく規律のとれた軍を用いて叛乱軍を徹底的に駆逐し、恐怖させなければならない。
兵は恐怖によって萎縮し、叛乱は終息する。
張翼が上手くやってくれることを祈るばかりだった。
姜維の役目は、この怒り狂っている男を守り抜くこと。
鍾会が死ねば魏軍の統制をとる者がいなくなる。
混乱した成都でそれは危険過ぎた。
叛乱を鎮圧するだけで数ヶ月費やしてしまうことになる。
それは避けたかった。都を穿(ウガ)つには、速く進軍する必要があったのである。
街の火が強まっている。
逃げまどう人々の声と、陣太鼓の音。
鼻をつく腥風(セイフウ)は、統制を失った兵が民を殺し、金品や食糧を掠奪しているからだった。
鍾会の軍が懸命に抑えているが、四方の門から押し寄せている兵が政庁に到達するまでそれほど長い時はかからない。
蜀軍がどれだけはやく戦闘を開始できるか。
姜維の頬を一筋の汗が伝う。
少しすると、血相を変えた親衛が戻り、報告する。
鍾会は言葉を失った。
城内に囚われていた将校や官僚は力を合わせて牢の門を封じ、兵の侵入を頑として防いでいるという。
他の場所では屋根を伝って叛乱軍と合流し、すでに逃げ去った者も多いとのことだった。
報告を聞いて、次の命令を出すこともなく、鍾会は座り込んだ。
髭には白いところがあり、頬はやつれ、目は窪んでいる。
顔色も血の気を失って悪かった。
完全に戦意を失った、という感じだった。
姜維は横目で見やり、また視線を荒れる街に戻した。
張翼が間に合えば、なんとかなる。
時間がない。
急げ、蜀漢の勇士達よ。
心のなかで念じた。
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