入学式

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それと父と話をしているときは気にしなかったが、お酒の方は大丈夫だったのだろうか。 彼は定期的に病院に行っていた。 結果もお酒の飲み過ぎということで、医者から摂取し過ぎないよう言われてたらしい。 いつもは1本だけだったが、今日はその3倍飲んでいる。 家を飛び出した和真だったが、父が心配だった。 家に着いてドアを開けるとリビングにビールの缶が転がっていた。 一抹の不安がよぎる。 靴を乱暴に脱ぎ捨ててリビングに向かう。 テレビがついているが、父の姿が見あたらない。 風呂場やトイレにもいない。 1階にある父の寝室にもいない。 もしやと思い階段に行くと、4、5段上がったところで父が倒れている。 階段の電気を点けて駆け寄った。 何度も声をかけるが返事が無い。 まさか酔ったまま階段から転落したのではないだろうか。 最悪のことを考えると、パニックになってきた。 救急車を呼ばなければと慌てて立ち上がる。 「和真か」 電話のところへ行こうとしたとき小さな声が聞こえた。 「お父さん大丈夫」 必死になって父の体を揺する。 「ああ、大丈夫だ。悪いが水を持ってきてくれ」 すぐにコップに水を入れて彼に渡す。 ただの飲み過ぎでよかった。 父までいなくなることなど、考えたくもなかった。 それから彼は自分の寝室へと戻っていった。 和真も廊下の缶やリビングの食事を片付けたあと、風呂に入り2階の部屋に入った。 まだ午後10時前だったので、本を読んだ。 読書中ふと疑問が浮かぶ。 どうして父は階段にいたのだろうか。 彼の部屋は1階だし、2階は和真の部屋と物置部屋しかない。 おそらく理由などないだろう。 酔っていたからたまたま階段にいただけに違いない。 本を読み終えたとき時刻は午前1時を回っていた。 眠気に襲われベッドに横になる。 今日は入学式だったというのに、とんだ1日だった。 父に謝ることも、妹の名前を聞くのもすっかり忘れてた。 また機会があったときに聞こう。 和真はある決心をしたあと眠りについた。
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