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今和真と祥浩は職員室にいる。
呼ばれてから何分経っただろうか。
「どうしてお前たちを呼んだか分かるか」
若い先生ではあるが、いかにも熱血という感じが数々の発言から伝わってくる。
「朝の遅刻はすみませんでした」
続けて和真が式の間に考えた言い訳を話そうとするが、工藤の声で遮られる。
「遅刻だと、さっきの朝のチャイムは予鈴だ、だからお前たちは遅刻などしていない」
じゃあなんで呼ばれたのかと祥浩が聞く前に工藤が続ける。
「私が門で挨拶した時にお前たちは返事をしたか、2人とも無視していったようだが」
確かにそうだ、あの時は遅刻で怒られると思っていたから、そのまま無言で通りすぎてしまった。
「私も入学初日から叱るつもりなどない、しかし挨拶は必ず返すように」
長引くかと思っていた説教も早めに終わった。
しかし帰り際に罰として帰りの会に配るプリントなどを運ばされた。
廊下に出ると式の時に和真と祥浩の間に座っていた川原という女の子が入れ替わるように入っていった。
和真が川原と目が合うと、彼女は何故か少し笑っていた。
和真たちは五組の教室に着いてからプリントを教卓に置いた。
それから一分もたたないうちに、工藤と川原が一緒に教室に入ってきた。
同時にチャイムが鳴る。
教室内では再び工藤の挨拶と、学級通信などのプリントが配られた。
そのあと一人ずつ自己紹介をすることになった。
和真の挨拶は他の人とかわらなかったが、祥浩の挨拶は印象に残った。
彼だけ前に出てきて挨拶したからだ。
そのせいか、すっかりクラスに溶け込んでいた。
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