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飲みすぎだが、そんなことを気にしている場合ではない。
「いろいろってどういうことなの」
「和真に話してもまだ理解出来ない。父さんもこの話をするのは嫌なんだ」
少し怒るような口調になっている。
でも聞かずにはいられない。
「もう少し詳しく教えてよ、お父さん、意味が分からないよ」
「たがら今お前に話しても理解出来ないと言ってるだろ。俺もこんな話はしたくない。でもお前は中学生だ。せめて母さんの話だけでもと思って話をしているんだ」
早口で捲し立てる姿は、いつもの父と変わらない。
話し終えたときに机を叩いたので、怯んでしまう。
「すまない、結局いつもの俺だ。今日だけは酒を飲まないでちゃんと話をしたかったのに」
「いいよ、慣れてるから。それに僕も深入りしすぎたと思う」
頭が混乱しているなか、言えた言葉はこれだった。
「でも和真が大きくなったらきちんと話す」
確かにその方がいいだろう。
中学生になったばかりの和真には、母が生きていることを理解するだけで精一杯だった。
「それともう1つ」
「もう1つ」
まだあるのかという感じでつい聞いてしまう。
「ああ。母さんがいなくなるまで和真と一緒にいたあの子はお前の妹だ」
また訳の分からないことを父が話す。
確かにお母さんがいなくなるまで毎日一緒に遊んでいた女の子がいた。
でもその女の子は近所に住んでいる子だとお母さんに言われてた。
だから、妹とは微塵も思っていなかった。
「母さんからでたらめを言われてたかもしれないが、歴としたいもうとだ」
無意識のうちに、和真はリビングから玄関へ向かう。
ただ外に出たかった。
部屋の奥から父の声が聞こえたが無視して飛び出した。
玄関に置いてあったデジタル時計は4月1日午後7時半を表していた。
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