開始のゴングは父の役

3/6
前へ
/611ページ
次へ
暑い夏が過ぎ、冬に差し掛かろうとしたところで2人は仲良く家に現れ、荷物も一式持ってきていた。 またここに住むのはいいんだけれど、問題はここ最近で一番驚いた出来事のせいで、双子には帰宅命令を出さなくてはいけない事態になりそうだと言う事。 その出来事が……。 「父さんな……今度再婚しようと思ってるんだ……それについて優也はどう思うか聞かせてくれ」 双子と再び一緒の生活を始めてから1週間……ある晩急に父さんからそんな連絡が入った。 あまりに唐突で、あまりに意味の理解し難い言葉に俺は受話器を落としてしまったが、どうやら父さんは本気らしい。 つい2ヶ月前には手紙なんて風流な物を送ってきたのに、いきなり文明の利器でドッキリですか。と信じたかったが、父さんは真剣な声のトーンで話を続ける。 「父さんが出張先で病気に掛かってな、薬を貰うために病院に行った時の話だ。そしてそこの待合室で出会ったんだ……」 それから長々と再婚しようとしている相手の話を続け、30分ほど聞かされたところでやっと俺は解放され、受話器を置いた途端に疲れが押し寄せる。 まぁ父さんの人生に俺がとやかく言う筋合いはないし、随分と昔に母さんとの踏ん切りもついているようだから、俺は特に反対はしないけど……。
/611ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7682人が本棚に入れています
本棚に追加