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ないんだ。
そう言うつもりだったが、優也はふと考えてしまった。
俺にはもう時間がないのは覆しようのない事実……それは分かっているのだが、他の3人はどうなんだろうか。
例えば和羽と関羽のタイムリミットは明日かもしれないが、どうにか頑張って時間を遅れさせたりは出来ないだろうか。
考えれば考えるほど頭の中がぐちゃぐちゃになってしまいそうだったが、それを見ていた智恵は真剣な眼差しで優也の袖を引っ張った。
「私は優也が幸せになれるなら何でもする。それこそ……優也と一緒に全てを投げ出して逃げてもいい」
「全てを投げ出して……」
それは智恵が抱く本心からの気持ちで、それは優也にある決意を固めさせる一言となった。
智恵の言葉と覚悟に俺はようやく自分のやるべき……いや、やってみるべき事が分かった気がする。
「智恵……悪いけどちょっと用事が出来たから、これを教室まで届けてくれないか?」
先ほどの弱気な態度から一変し、優也がどこか吹っ切れたような表情になっていることに気付いた智恵は大きくそれに頷く。
「本当に悪いな。でも智恵のおかげで妙案……というか奇策が思い付きそうなんだ」
「大丈夫。それがどんな考えであれ優也が決めた事に間違えはないはずだから」
俺は伊集院さんに退学の事を言われてからずっと皆が助かる方法を考えてきたけれど、もしかすると心の何処かで自分はとにかく助かりたいと思っていたのかもしれない。
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