誘拐犯!?優也の捨て身の解決案

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そして意を決して発信ボタンを押そうとしたところで……急に目の前が真っ暗になった。 「えっ?……えぇっ?」 呆気にとられる優也だったが、その背後からは恐らくこの暗闇を作り出したであろう人物の笑い声が聞こえてくる。 「あははっ。さてさて私はだーれだ?」 それはもう声ですぐに分かってしまったのだが、驚かせたお返しのつもりであえて優也は分からないふりをしながら首を傾げた。 「こんな事するのは和羽か大地くらいだろうけど、和羽じゃ背は届かないし大地はこんなに声が女の子っぽくないよな……そうすると残るのは」 「わくわく……わくわく」 お、おぉ……初めてわくわくって口に出して言ってる人に出会っちゃったんだけど……もうそろそろいいのかな? いったい詩帆さんのこういう流れはどこまでやれば正解なのか未だに分からないため、俺は両手を上にしながら降参のポーズをした。 「ギブアップ。俺にはちょっと難しいかな」 「えぇ!?そんなぁ!私だよ?優くん愛しの詩帆だよ?」 すると詩帆さんは意外にもテンパりながら俺の前に回り、あたふたしながら金髪のツインテールを揺らしていた。 それがついつい面白く、優也は少し吹き出しながらそれを眺めていた。 そしてそれを見ていた詩帆もようやく自分が茶化されていたと気付き、がっくりと肩を落としながら涙を流す真似を始めた。 「酷いよ優くん。純情な乙女心を弄ぶなんて……けどそんな優くんもありかも」
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