誘拐犯!?優也の捨て身の解決案

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詩帆さんが髪紐を外した事なんて今までに1度もなかっただけに、俺は妙な緊張感の中次の言葉を待っていた。 そんな優也を見つめながら詩帆は夕日を背景に、懐かしむような眼差しで紐を少し上にかざす。 「ねぇ……優くんはずっと前に私がこの髪の色のせいでいじめられていたのはもう思い出したよね?」 そしてそう質問された俺は昔を思い出しながらそれに頷く。 詩帆さんと出会うまで記憶が消えていたが、今では鮮明にあの頃の記憶を覚えている。 「あの頃の優くんはすっごく優しくて……他の誰よりも強かったのを私は今でも忘れてないよ」 そういえば俺が幼いときに後ろにいつもいたのが詩帆さんだった。 最初はいじめっ子から守るために一緒にいただけだったが、時間を重ねていくうちに幼少期では一番仲の良い友達になっていた。 「それでね。私はずっとそんな優くんに憧れてて、いつか私もこんな風になれたらって思ってたんだ」 そう恥ずかしそうに語る詩帆を眺めていた優也は、ふと頭の中にいくつかの疑問が浮かび上がっていた。 どうして詩帆さんは急にこんな話を切り出したのか。 どうして詩帆さんはこんなにも何かを決意した表情で俺を見ているのか。 その答えはすぐに分かることになるのだが、優也は結局その言葉を聞いてから知ることとなる。
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